農学博士 児玉不二雄のWeb講座 植物の病気の話

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更新日:2016.12.07(水)

第16話 テンサイの褐斑病(カッパン・ビョウ)

 テンサイは、甜菜のカタカナ書きです。サトウダイコン(砂糖大根)が正式名称とされたこともあります。栽培農家は英名のビート(sugar beet)を使います。褐斑病はテンサイの最重要病害であり、この病害の防除なくしてテンサイの安定生産は望めません。

《 病徴 》
 褐斑病はカビによって起こる病気です。主に葉に発生します。この病気が出始めるのは7月下旬頃からで、下の方の葉に赤紫色の小さな斑点が生じます。これが後に大きくなり、直径2~4mmの円形病斑となります(写真1)。病斑の中心部は薄い褐色、周囲は褐色~赤紫色となります(写真2)。湿度が高くなると、病斑の上に病原菌であるカビがたくさんの胞子を作ります。この胞子は分生子(ぶんせいし)と呼ばれますが、密集して灰色がかった白い粉状となります。症状の進行したテンサイでは、葉の付け根の葉柄(ヨウヘイ)にも、細長い褐色~黒色の病斑ができます。褐斑病は8月中~下旬になると急速に拡がります(写真3、4)。症状の激しいものでは、1枚の葉に数百個の病斑が生じて葉の全面が褐色となり、ついには枯れ込んでしまいます。この病気によって成長した葉の大部分がなくなってしまうと、新しい葉が再生します(写真5)。そうするとせっかく根の中に蓄えていた糖分が低くなり、収量も減ってしまいます。


▲(1)初期病斑 ▲(2)初期病斑の拡大写真。直径3mm程度です

▲(3)病斑が葉の表面に点在 ▲(4)拡大した病斑。葉の裏側 ▲(5)褐斑病の末期症状。葉が枯れ込んでいます

《 伝染経路 》
 伝染源は、罹病した種子や茎葉の中で越冬した分生子や子座(シザ:分生子の塊と考えてよいでしょう)です。病原菌はこの状態で1年以上生存します。茎葉で越冬した病原菌は20℃以上になると新しい分生子をつくり、これが飛散して葉に感染します。種子に感染している菌は、種子の発芽・生長とともにテンサイの体内に侵入します。

《 発生環境 》
 病原菌は5~37℃の範囲内で生育します。伝染のポイントになる分生子は24~25℃で盛んにつくられます。日中に飛散して、葉の気孔(キコウ)から侵入します。気孔とは植物が呼吸する鼻です。感染してから発病までの潜伏期間は、30℃では7~8日、25℃では9~10日、15℃では19~21日です。また、若い葉では潜伏期間が長く、病斑数も少なくなります。連作畑や、前年にテンサイを栽培した隣の畑、あるいは被害葉をすき込んだ畑では、早くから病気が発生して被害も大きくなります。

《 防除法 》
 健全種子を使いましょう。3~4年、輪作しましょう。被害茎葉を畑にすき込んではいけません。飼料用ビートに隣接して作付けしてはいけません。薬剤散布の開始時期は、発病株率で50%を目安としましょう。

今回のキーワード:サトウダイコン、初期病斑、潜伏期間、気孔害
写真:著者原図